2018年コワーキングスペース探訪記 〜約20件のコワーキングと100人の利用者から見えてきたこと〜
どもども。青木です。
さて、お正月の投稿で私の師匠・ポンタさんがオープンアンドシェアについて投稿されてました。「大意はノウハウを隠すよりも公開したらええ。そうしたら自分の間違いや足りていない視点にも気づける。」というてらっしゃいまして、なるほどと思ったのでこの記事を書いてみました。読んだ方々も何かお気づきの点があったらコメントいただけると嬉しいです。
僕のサービスについてちょろっと説明しつつ、私が2018年に見歩いてきて感じたコワーキングの価値についてつらつらと述べていこうと思います。(元記事もいいので見てね。)
■そもそもなぜコワーキング探訪記なんか書けるのか
僕が「100人とお話しても1人目の内容を思い出せる」をコンセプトにサービス開発をしているのは先日Facebookにて記述した通りです。
少しそのサービスを遡ると、「フリーランスの人ってどうやって仕事を取ってきているのだろう」と考えフリーランスを追いかけたのが始まりでした。
私が独立するにあたって「誰かが、自分の能力に合ったまぁまぁ楽な仕事を、いい値段で持ってきてくれたら嬉しいな〜」と思ったからです。(あまりに怠惰な発想!!)
ということでフリーランスの人や経営者を追いかけていったのですが、
その中で「紹介」というキーワードが自分の中で大きくなってきました。
また、フリーランスの方々がコワーキングスペースを拠点とされている場合もままあり、よし、いっちょ見に行くか!となったのが最初です。
ちなみに書いてみて「20件って大したことないなぁ」と思ったのですが、
まぁ書くことに意味があるでしょう!ということでいってみよー!
■コワーキングスペースってなに?
コワーキングスペースには色々あるので一旦定義を確認しておきましょう。
コワーキング(Coworking)とは、事務所スペース、会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルを指す。(Wikipediaより)
はい、このワークスタイルを可能にする場所がコワーキングスペースですね。
こんな感じで違和感がある人はいないと思います。
コワーキングスペースは掘れば掘るほどその設立目的に違いがあり、運営方針に違いがあることがわかってきました。例えば歴史の長めなコワーキングスペースだと「遊休不動産の活用で始めた」「オーナーの趣味」などに始まり、最近大企業が相次いで開設しているスペースだと「イノベーション拠点として」だったり、「社外人材・情報との接点」など様々に違いがあります。
ちなみに利用者はどんな意図で使うのかというと、
「事務所費を安く抑えたい」「さすがに家では仕事にならないから」「交流の場として」「よく行くエリアなので拠点にしたい」など様々に意図があります。
中には利用料無料のスペースでマルチの勧誘や保険の商談も行われているなど、
けっこうカオスです。
利用者の意図もメチャクチャなのでコワーキングスペース側はいろんな対策をします。
・面談を設定して利用目的やコミュニティに対して何が貢献できるか確認する。
・利用料を取らずとにかくたくさんの人に来てもらう。
・イベントをしまくって多様な人が来るようにする。
・利用規約に抵触する行為を行う人をマネージャーがサーチアンドデストロイする。
などなどです。
■コワーキングスペースはコミュニティをどう捉えているか
さて、本題に入っていきたいと思います。
スペースも利用者も目的は様々な中で重要視されているのがコミュニティであることは(We Work(ニューヨーク発のシェアオフィス。ソフトバンクから累計74億ドルの出資を受け、昨年上陸した日本でも東京を中心に既に14拠点を構える。)の到来とその人気(入居者数はともかく(単純に私が知らない)見学者がたくさん!!)からも明らかになってきました。)
そこでコワーキングスペースも様々なコミュニティ活性化施策を実施します。
・イベントの開催
・利用者への声かけ
・SNSグループの作成(特にWe Workは専用のSNSがあります)
・今いる利用者の見える化(名刺を置いたり、会員証かざすとログインしたことが伝わる、など)
この中で重要になってくるのがコワーキングスペースごとが検討しているコミュニティの範囲です。
例えばコワーキングスペース自体がクローズド(ドロップイン(一時)利用不可・利用登録者(入居者)のお客さんのみ入れる)ような状況だったり、もう内も外もない(たくさんの人が出入りする)ケースだったり、入居者のためになるイベントを開いて交流を促進したりなどもうほんとに多様なのです。
そこで利用者同士のマッチングを起こしてコミュニティ化するわけですね。
アメリカやドイツでは利用者同士がよく「ヘイ、はじめましてだね。君は何しているの?」みたいな会話が繰り広げられるそうですが、日本ではそうもいきません。
なにか利用者同士がコミュニケーションを取るような「言い訳」を用意する必要があります。そこでコミュニティマネージャーの出番です。「あ、青木さんちょっと紹介したい人がいまして〜」と声をかけていくわけです。それによりマッチングが成立し、コミュニティの糸が一本繋がります。それをいくつも何度もやってだんだんメッシュ化していくわけですね。
■コミュニティを作ると何がいいの?
さて、そもそもコミュニティを作ると何かいいことがあるのでしょうか。
それは「ここじゃないとダメ」という理由になるから、もっと直接的に言えば利用率が上がり、離脱率が下がり、新規流入が増えるのです。
今やただ執務するだけならカフェだって家だっていい。
バーチャルオフィスに登記し、電源を備えたカフェでコーヒーチケットを使ったらもしかしたらシェアオフィスよりも安上がりかもしれない。
しかし、コミュニティを作ることがこれらの選択肢をより強力に否定します。
コミュニティが存在することでコワーキングスペースを利用する価値がものすごく上がるのです。
ではコミュニティとは何か。
コミュニティの実態は「利用者同士間における相互の問題解決が行われる集団」です。
コミュニティが形成されるためにはいくつか必須要素があって、
・互いのステージが似ていること(差がありすぎると相互の問題解決にならない)
・問題解決の行為に報酬があると期待できること(giveだけではなりたたない)
・互いの課題が顕在化されていること(なんでもgiveすりゃいいってもんじゃない)
この辺りがきちんとできているとコミュニティ化していきます。
■コミュニティを作れないともう人を集められない
コワーキングスペースにおけるコミュニティはもうほんとに重要です。
そこには行動経済学上の様々な効果が働いています。
・ウィンザー効果:
口コミですね。誰かが良いと言っているものは良いものに見えてきます。
・スノッブ効果:
「皆と違う」ってやつです。コミュニティはできてしまえば構成員によって得意な課題が変わってきます。コミュニティがないと「違い」にならないわけです。
・ヴェヴレン効果:
高価であればあるほど価値を感じる、という効果です。例えばどんなにオシャレなスペースでも利用者がいなければ「あれ、ここ使ってる俺イケてない?」という気持ちになります。
これが悪い方向に働くともう最悪です。
ウィンザー効果によって「あそこ微妙だよ」と言われれば足を運んでもらえず、
スノッブ効果によってせっかく来た人が「なんかオシャレなだけだなぁ」という感想だけ残して去り、
ヴェブレン効果によって「あそこ行ってみたけどイケてないわ」という発信源になってしまいます。
一方逆手に取ったWe Workの手法は鮮やかです。
鳴り物入りでやってきて、オシャレな上にたくさんの人が行き交い、
入居者が満足げに来訪者と接する…。
We Workに入居している方にもインタビューしてみたのですが、
入居後最も感動したことを伺ったところとても印象深いコメントをしてくださいました。
We Workに入居して最も感動したことは入居したその日、
専用SNSで「Welcome to We Work」というメッセージを受け取った時です。
と仰っていました。「世界と繋がる感覚に震えた」ということですが、特にビジネスのやり取りがあったわけではないとのことです。
ここから実態以上に“コミュニティに対する期待感”が重要であることがわかります。
なので「あそこはイケてない」という評判はもの凄くダメージのあることなのです。
2018年もコワーキングスペース、特に大企業が主催するスペースが多く誕生しました。
実際に訪問してみるとその盛り上がり方やコンセプトは様々です。
特に特に無料であったり安価な利用料で使えるスペースは徐々に成果が求められてきます。
何か新しいサービスが生まれた、自社の社員が何か刺激を受けて行動を起こした、などそのスペースがただ消費されていないことを社内でも示す必要があるでしょう。
有料でも人が集まっているのに、無料なのに人が集まらないスペースも増えてきています。
利用者同士での問題解決を促進し、コミュニティを形成することがよりシビアに求められるでしょう。また、有料で人が集まっているスペースも、「スペースが利用者に与えた価値は何か」がわかっていないと簡単にひっくり返ると思います。利用者・入居者の自力に頼りきってはいけません。
以上、コワーキングスペースと利用者の方々に伺った色々から所感をまとめてみました。
ここまで読んでいただいた皆さんありがとうございました。