地方発スタートアップの勝ち筋は“エコシステムづくり"にあり

どもども。青木です。

 

先日Talk your willが仙台で開催されまして(オーガナイザーであるPALLETのあきこさん、ありがとうございました!)登壇させていただきました。

その中で、地方のスタートアップで勝ち筋とは、みたいな話しになったので共有したいと思います。 

 

■私のwill

まず私のすごく個人的なwillなのですが、
震災直後に「かわいそうな東北」と言われたことへの得も言われぬ悔しさがありました。もう誰にいつ言われたのかは思い出せないのですが、この悔しさ、怒りは今でも残っています。

「もう二度とかわいそうな東北なんて言わせない。」そう最後に宣言させていただいたのですが、その後の懇親会で「俺もあの言葉だけは許せない」と声をかけていただいた方は目に涙を浮かべていました。

羊一さんは「東京から来ると仙台全然イケてるじゃん!って思うけどね!」とコメントしてくれました。その感覚もすごくよくわかります。なんせハーバード大学が毎年被災地でのビジネスを考える合宿を開催しているくらいですし、別に「かわいそうな東北」と皆が思っているわけではないことも承知です。

心無い人が言ったわけでもない、きっとあのときの被災地を想ってくれた方がおっしゃったのだろうとは思いますが、今では僕のエンジンになっています。

■地方発スタートアップエコシステムの強みは第三セクターサポート

僕の持っている仮説の話しをしていきます。

地方でスタートアップをやることの強みは行政のソフトなサポート力だと感じています。細かな露出が多く、結果的に我々の信頼性アップに繋がっています(銀行などお金が絡んでくると会社を調べますから、初めての場所でもよく「あの青木さんですか?」と言ってくれるようになりました)。

 

先日Coral Capitalの相談会に行ってきて、澤山さんとお話ししたのですが神戸でも似たようなことが起こっているようです。

なんでも、「スタートアップがなかなかアクセスできないデータに大学や病院が連携して進めてくれる。その窓口として行政の方がつなぎ役になっている」というお話しでした。

 

石を投げれば起業家に当たるシリコンバレー流と異なり、日本のスタートアップはまだまだ発掘・育成が必要と言われています。
起業家密度の高い東京ですらそう言われているのですから地方でスタートアップがないエリアは育成が重要になってきます。

そこでこれまで仙台市MAKOTOが果たしてきた役割は小さくないわけです。最近では消滅可能性都市となっている丸森町でも地域おこし協力隊を活用した起業家向けベーシックインカムの取り組みがなされています。福島は浪江町でも自動運転の実証実験 がなされるなどしていますね。

これらの取り組みは地方できちんと関係性を築ける人であればあるほどアクセスがしやすいと思います。サービス自体がいかにしっかりしているかよりも、その人が本当に地域に貢献してくれる気持ちを持っているかが重要視されていると感じます。

 ■スタートアップの成功をどう地域と絡められるか

私が今課題を感じているのはここです。

前述の通り、地方発スタートアップの戦い方は第三セクターからのサポートによって東京のスタートアップにできないことをすることです。

では、どうやって地方発スタートアップの成功を地元に還元するかが大事です。

私のチームは現在8名ですが、全員東京にいます。
大学時代にNPOで一緒に活動していたメンバーが多いですが、
卒業して3年経った仙台ではもうチームアップができそうなツテなどはありませんでした。

率直にいえば、スタートアップにチームメンバーとして関わってみたい、という人材がまだまだ少ないです。
それは単純に接点とスタートアップ母数の問題だと思っています。

シリコンバレーのように「あの起業家はいくつも会社を作っては人に渡して、作っては人に渡ししててね」というキラキラエピソードにあふれているわけでもなければ、東京で数あるスタートアップがいる中で「ちょっとやってみようかな」「へー、スタートアップやるんだ…(ググる」の機会がないのです。

 

また、「ちょっと手伝って」≒ボランティアになっていた時期が仙台にありました。“ちゃんとお金を回そうね"という意識はだんだん出てきましたが、スタートアップ的な「よっしゃ、チームとしてジョインして最初のメンバーとして株持ってよ」とか、「今はこの金額だけど将来大きくなってストックオプション出すからね」というインセンティブは知識の点から利きにくいように感じます。

しかし、非営利のボランティアに対して営利のスタートアップは労働対価を支払うことを前提に話が進んでいきます。この発想はぜひインストールしていきたい。

 

私も今のメンバーにきちんと給料を払えるようになって、
開発体制が整い次第仙台での採用をガンガンやっていきたいと考えています。
我々スタートアップは採用欲旺盛です。資金調達計画は採用計画を基準に作られています。そこがスモールビジネス*1との違いです。スタートアップはどんどん雇用を創出していきます。その時に、地元からお付き合いでなく雇用ができる環境があることは必要不可欠、むしろこれができなければ私のwillとして大失敗なのです。

その前段階としてまずはスタートアップ仲間を増やしたり、スタートアップとはなにかということをどんどん伝えていくのが私の仕事だと考えています。

 

 

■スタートアップエコシステムを構築する

仙台レベルの規模感ですらチームアップまでいくのはちょっと厳しいような気がしています。様々なイベントを通して繋がりの創出を行っているのですが、「ここに行けば◯◯な人がいる」みたいなわかりやすい入口が出てきたのは最近のように感じています。

 

松下幸之助が「あんたのところは他社製品のマネしかしないじゃないか。“マネした電器”と呼ばれとるぞ。」と言われたときに、
「そうですねん。弊社にはソニーという優秀な研究所がございまして。」と返したといいます。ソニーの役員と松下幸之助はよく飲んでたらしいです(笑)

発明の得意なソニーと広げるのが得意なパナソニック。当時はそんな競争(?)関係があったのかもしれません。とにかく互いの動きを把握しながら持ちつ持たれつやっていった。

 

また、先述したようにまず「スタートアップとはなんぞや」をやっていかなければなりません。


「スタートアップ経営者に触れよう!」みたいなのはちょっとおこがましくてできないので、まずは入居してるenspaceにスタートアップ本を寄贈させていただいたり、私が仙台にいるときはランチ会を開催(前回やって面白かったのでちゃんとやろうと決めました)したりしています。
ランチ会はもうカジュアルを通り越して、「僕がご飯作るのでみんな食べに来てください」というスタイルでやってます(笑)

まずはenspaceのインターン生とその場にいる入居者の方を捕まえて…という形式ですが、何回かやってみて広げるか広げないか検討したいと思います。


密かに「任せて!あおきっちん」って呼んでます。僕にとっても料理するのは良いリフレッシュになってます。活動に賛同いただき、一緒にシェフやってる将太さんの回も名前考えないと…。

こういった活動は我々スタートアップのプレイヤーがやっていく必要があると考えています。起業家仲間を増やすこと、起業に興味がある人が関われる場所を作っていくこと、きちんと地元の人材を雇用していくこと。これがいずれ地方のスタートアップが勝つ秘訣だと思います。足元の人材なくして成功のイメージは見えません。地方への貢献のあり方は会社のステージに応じて様々な形があると思いますが、人を残すことこそ重要と考えています。

 

地方でのスタートアップ成功事例は一社だけではない、皆での成功が重要だと思います。それぞれの抱えるミッション、資源を持ち寄ってどうすれば皆で成功できるかを考えることが大事です。

地方から人材はどんどん流出していきます。
今、しゃんと立ち上がることが我々スタートアッププレイヤーだけでなく地方の勝ち筋になっていくと思うのです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

*1:規模は小さいものの優良な企業である中小企業を指す。一般的に事業売却や株式上場による売却益を目的としておらず事業の拡大もスタートアップと比べて比較的緩やか